ちっちゃいけどパワフル。いつも元気いっぱいの現役獣医師が、厩舎や牧場のごく普通の日常をご紹介します。
ガンの化学療法を施された馬のお話
2014年05月29日 (木) | 編集 |

Calvin号
Calvin gets a brushing from owner Jane Withstandley and nuzzles her daughter, Blair (Photo/MICHAEL S. WIRTZ)


オーナーのジェーンは愛馬に顔をうずめました

「ごめんね。こんな思いさせて」

お気に入りのおやつを差し出し…そして泣き崩れました

愛馬がガンの宣告を受けたのです

すぐに頭に浮かんだのは、どうやって死を迎えさせるか

愛馬の最期の時をなるべく快適に、そして幸せに過ごすにはどうしたらいいか…

しかし何よりも気がかりなのは彼と友情を築き上げてきた3歳のお嬢さん、ブレアちゃんに何て伝えたらいいのか、でした

彼女の愛馬Calvin(カルバン)号は10歳の牡

サラブレッドで、レースでは20戦1勝

彼女と出会った時はハンターとしての訓練を受けていたカルバン号

その時「幸せそうではなかった。とても怯えていた」ように感じたそうです

彼女はカルバン号を引き取り、自身で騎乗するようになりました

鞍はより体に合ったものに取り換え、ハミは当たりの柔らかなものに換えました

カルバン号はジェーンを信頼し始め、二人は競技会で優勝するようになります

「カルバンのジャンプは高くて力強いの。時々野生の獣に乗っているような気持ちになるわ」

でも彼女とブレアちゃんと一緒に馬房にいる時はとても穏やかなんだそうです

ガンが偶然見つかったのは今年の1月末

馬に比較的多いリンパ腫で、中でも比較的薬に反応するタイプでした

獣医師は3つの選択肢を提示しました

何もしないか、ステロイド剤で症状を緩和させるか、抗がん剤治療で完治を目指すか

ジェーンと家族は抗がん剤治療を選びました

Penn vet
(Photo/Penn Vet)

治療には15000ドル(日本円で約150万円)かかるそうです

保険でまかなえたのは最初の3か月で、ご主人と相談して貯蓄を崩そうとしていましたが、ジェーンのご両親が援助してくれました


抗がん剤治療の2回目で、体表のガンは目に見えない状態になったそうです

治療のクールの合間に二人は競技会、デボン・ホースショーに出場することもできました

今週末から次のクールに入ります

ジェーンはブレアちゃんにカルバン号の病気について話をしていません

それは彼が病気に見えないから

「元気でいられるよう時々病院に行っているのよって伝えてるだけ」

「私が大きくなったらカルバンと一緒にデボンに出るの」と言うブレアちゃんに

「そうなるよう祈ってるわ…」とお母さん



治療を施したのはペンシルバニア獣医大学のニューボルトンセンター

そう、ケンタッキー・ダービー馬、あのバルバロ号を手術した病院です

本症例がセンターで初の馬の抗がん剤治療になりました

これをきっかけに多くのオーナーが選択肢のひとつと考えてくれるようになるでしょう

症例が増えることで、今後の治療も大きく進みます

人と馬が少しでも一緒にいられる環境が、また増えるかもしれませんね


引用元記事
Chemotherapy gets a horse back in competition(The Inquirer)


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