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イプラトロピウム(気管支拡張剤)について
2006年11月16日 (木) | 編集 |
たまには獣医師らしいブログを書こうと思います

最近ある馬が海外競馬に参戦した際、レース後の検査で禁止薬物が検出され、話題になりました

今日にも問題に対する一応の決着がつけられるようです

この薬物が競走馬に対してどう作用するのか、紹介したいと思います



イプラトロピウム、正式には臭化(しゅうか)イプラトロピウムと呼びます
ヒトでは喘息(ぜんそく)や慢性気管支炎(まんせいきかんしえん)などの吸入治療に用いられる、ポピュラーな薬です
神経(迷走神経といいます)が緊張し、気道(空気の通り道)が縮むと、呼吸はとても苦しくなります
これを防ぐため、気道が縮もうとする作用に反抗するような成分を与えて対抗します
やがて気道は拡がり、呼吸はラクになります。これがイプラトロピウムの働きです

日本では一般にウマ治療には使用されていません(私も使用経験はありません)
海外ではウマの吸入治療に使用されており、作用時間は4~6時間程度とされています
競走馬には慢性の呼吸器疾患がとても多くみられます
この薬を投与することで肺自体に作用があることはわかっているのですが
慢性の呼吸器疾患を持つウマには運動能力の改善を認めなかった
という報告があります(1999年の論文)
肺に作用することはあってもそれが競走の能力を高めるものではない、というものです





私はこの問題について何か言う立場にはありません

でも思うことはあります

みなさんにもいろいろ考えてもらえたら・・・と思います





参考文献
1: Equine Vet J. 2002 Jan;34(1):36-43.
2: Equine Vet J. 2001 May;33(3):302-10.
3: Equine Vet J. 1999 Jan;31(1):20-4.
4: Equine Vet J. 1997 Nov;29(6):471-6.
5: Vet J. 1997 Sep;154(2):149-53.

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