ちっちゃいけどパワフル。いつも元気いっぱいの現役獣医師が、厩舎や牧場のごく普通の日常をご紹介します。
奇跡の馬、カリフォルニアカップダービーへ
2015年01月17日 (土) | 編集 |

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Tough Sunday(Photo by Alexis Garske)


3年前、米国カリフォルニアで難産の末に生まれた新生仔

胎仔は大きく、引き出そうとする際に臍帯(へその緒)が切断してしまいました

生まれたのは低酸素状態から盲目で耳も聞こえず、哺乳行動もない牡の仔馬

このような状態を「新生仔不適応症候群Neonatal Maladjustment Syndrome(NMS)」と呼びます

他にダミーフォール、ライオン病、低酸素虚血性脳症などとも呼ばれます

すぐに近くの病院に搬送しICUに入院

「たくさんの針やチューブをつながれて、まるでピンクッション(裁縫で使う針刺し)のようだったよ」

オーナーのアレキサンダー氏は当時を振り返ります



母馬は反応のない仔馬に興味を示さず、育仔放棄

仔馬の状態は変わらず、目が見えず、耳も聞こえず、心雑音があり、肺炎も併発しました

入院5日目、オーナーは決断を迫られます

このまま治療を続けるのか、それとも…

悩んだ翌朝、入院馬房に向かったオーナーが中にいる仔馬の様子をのぞき込みました

すると仔馬はこれまでなかった仕草を見せました

「両目が俺を追ったんだよ…あいつには俺が見えてる!見えるようになったんだ!」

「…もうそれだけで俺には十分だったよ」



退院するまではそれから一ヵ月もかかったそうです

Tough Sunday(タフサンデー)号と名付けられたその馬は、昨年末サンタアニタパーク競馬場のレースを6馬身以上の差で勝利し

次走をカリフォルニア・カップ・ダービーに決めました

米国の年度代表馬候補のカリフォルニアクローム号が昨年勝ったレースです




日本にもほんのわずかですが同じような状況を乗り越えてデビューした馬がいます

毎年競馬業界をにぎわせる年度代表馬の選出

米国ではもうすぐ、現地時間の17日発表になります

私たち獣医師にはもちろん、馬に関わる全ての人に、自分だけの年度代表馬がいると思います

声援を受けることもないかもしれない…成績もパッとしないかもしれない…それでも心にずっと残る大切な馬なんです



Tough Sunday号のオーナーは言っています

「年度代表馬に"勇気"の部門があったら、こいつが最有力候補さ」



カリフォルニア・カップ・ダービーは今月24日サンタアニタパーク競馬場で開催されます

生きているだけで奇跡ともいえるこんな馬を、そしてそんな馬と共に歩んだ関係者を、私は応援したいと思います



参照記事「Miracle colt: Horse born blind and deaf makes it to the winner's circle」



夢のブリーダーズカップへ
2014年10月31日 (金) | 編集 |

8月に開催された米国アーリントンミリオン

2014 Arlington Million


優勝したのはHardest Core(ハーデストコア)号(せん4歳・父Hard Span)

このレースを勝ったことで今週末、米国サンタアニタパーク競馬場で開催されるブリーダーズカップの出走権利を獲得しました



実はこの馬

昨年の11月に、生死をさまよう大きな手術を受けています

Hardest Core号はキーンランドのせりで2万1千ドル(約210万円)で落札され

オーナーの息子Andrewさんの30歳の誕生日としてプレゼントされました

Andrewさんはダウン症だそうです
Hardest Core Andrew
(Photo: ALEJANDRO A. ALVAREZ)

彼を管理しているのはGraham調教師
Hardest Core Graham
(Photo: Penn Vet)

管理馬は2~3頭だそうで、何でも一人でやっているそうです

Graham調教師が去勢手術したばかりのHardest Core号を放牧し

しばらくして見てみると、馬が倒れていました

一目で痛みがあるとわかりました

そして、調教師は悪夢を目の当たりにします

手術をした部位から腸管が出ていたのです

あまりの痛さに馬は立ち上がれず、安楽死という言葉が頭をよぎりました

しかしHardest Core号は立ち上がります

調教師は急いで馬運車にのせ、近くのペンシルバニア大学ニューボルトンセンターへ搬入しました

去勢は多くの馬に施される手術ですが、出血や感染そして今回のような内臓突出などの合併症を起こすと生死にかかわります

手術は3時間におよび、腸管は19フィート(約5.7メートル)が切除されました

術後は良好で、合併症もなく、5日間の入院の後に退院

入院中に世話をしたTomさんとHardest Core号
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(Photo: Penn Vet)

Tomさんいわく「最高の患者さんだった。信じられないくらいお行儀よかったよ」

リハビリも順調にこなし、大人しく従順で、食べることと寝ることをこよなく愛しているというHardest Core号

術後はアーリントンミリオンの前に2つのレースを快勝しています

いったん競馬場のコースに入ったら…「彼は何をすべきかわかっているんだ。まるでマシーンのようだよ」

担当したDr.Southwoodの発表によると、疝痛手術から競走復帰する馬は76%

これまでのところ、外科的治療を施した群と内科的治療の群では、競走成績や獲得賞金に差はみられないそうです(同クラス内)

そして個人的に嬉しかったのは

彼の手術を執刀したDr. Louise Southwoodが

女性獣医師だったこと
hardest-core3.jpg
(Photo: Penn Vet)

手術には獣医師であるご主人も参加しました



Graham調教師は言います

有名調教師なら月に一度はこんな思いをするだろうけどね、僕みたいな調教師には一生に一度の経験なんだ

なんていうか…これは僕の夢だったんだよ



競馬にはいつも多くの人の夢が重なっています

Hardest Core号の関係者、病院関係者

世界中の馬関係者とファンの方々

そして我々獣医師も週末は熱い想いを抱きながらレースを観戦することでしょう

無事に走り終え、待っている人たちのもとに帰ってきてほしいですね

We wish you all the best luck and safe racing!




ブリーダーズカップ・ターフは11月1日(土)サンタアニタパーク競馬場

現地時間15時22分(日本時間11月2日(日)7時22分)発走です

ブリーダーズカップのサイトはこちら





R.I.P. St Nicholas Abbey
2014年01月15日 (水) | 編集 |
順調に回復していました

ひょっとして助かるんじゃないか…

そんな気持ちになっていました

でも彼は闘いに勝てなかった



愛国クールモアからの発表によると

セントニコラスアビー号が14日の朝

疝痛を発症

開腹手術で結腸に重度の絞扼を認め

安楽死処置されました

獣医師としては少し気になる流れではありますが…いずれわかることでしょう



こういう場合、すぐに解剖されます

治療経過を確認し、評価し、今後に役立てるための大切な作業です

骨折箇所は予想以上に治癒が進んでいたそうです

蹄葉炎部分も良くなっていたそう



獣医師はじめ関係者のみなさんの気持ちを思うと、言葉がありません

アビー、よく頑張ったね

もう痛い思いをしなくていいんだよ

どうか安らかに…


2013 Investec Coronation Cup - St Nicholoas Abbey




St Nicholas Abbey
2007年4月13日生まれ(7歳)
父 Montjeu
母 Leaping Water

生産 愛国
馬主D.Smith
  Mrs.J.Magnier
  M.Tabor
調教師Aidan O'Brien

生涯成績21戦9勝
獲得賞金4,831,354ポンド




マインザットバード号の映画「50to1」予告編
2013年12月23日 (月) | 編集 |
12月1日の記事で紹介したアメリカの映画「50to1」

2009年のケンタッキーダービー馬マインザットバード(Mine That Bird)号を取り上げた映画です

19頭中の17番人気

50to1はこの時のオッズです

待ちに待った予告編が公開されました

どんな映画でも競走馬のものならワクワクしますね

いつか観てみたいなー

50 to 1 the movie - Official Trailer - Ten Furlongs





シンガポールゴールドカップ
2011年11月14日 (月) | 編集 |

我らが高岡調教師がやってくれました!

13日(日)に行われたシンガポールゴールドカップ(SG1)

管理するエルドラド号(父ステイゴールド)が優勝

このレース同馬で3度目という偉業達成です

今月3日

学会に向かう途中でシンガポールに立ち寄り、先生のところを訪ねてきました

なんという好タイミング

先生、突然押しかけたのにたくさん時間を作ってくださってありがとうございました


厩舎の看板は

ホッカイドウ競馬で使っていたもの!


先生と

エルドラド号


調教も一緒に見ました

馬場を説明しながら「写真撮んなよー」とおどける先生


馬を見守るのも北海道のときと全然変わらない

優しい目



先生

本当におめでとうございます



これからも

今までと変わらず、ずっとずっと応援しています



シンガポールゴールドカップのレース映像はこちら(YouTube)



一日おきにブログ更新なんて雨降るね・・・・えっ!?ゆ、ゆ、雪???
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